「与信管理」と「債権管理」を混同してはならない。
与信管理とは、その文字が示す通り「与える」という「意思決定」に関するマネジメントだ。
一方、債権管理とは「債権」の管理であり、その発生・消滅・残高のマネジメントの話である。
どちらが高尚だとか、そんな話ではなく「別物だ」ということだ。
端的な例を示そう。
税金だ。
一定の課税要件が満たされれば、国は個々の納税者に対して「国税債権」を持つことになる。
ただ、そこに国の「意思決定」は存在しない。
要件が満たされれば、相手が誰であろうと、国は法で定まった金額の国税債権を持つ。
だから、国において「与信管理」は存在せず、あるのは「(国税)債権管理」の業務のみである。
(これが国税債権が破産等において優先される一つの理由である。相手を選べないから優先権を与えられているのである。これを国税の「無選択性」という。→関連記事「債権の本質から考える与信環境」)
税務署には管理徴収部門という部署があって、そこで個々の納税者に関する「債権管理」(滞納整理を含む)を行っているが「与信管理」は決して行っていない。
医療機関もそうだ。病気やケガで病院を訪れた患者を選別することは原則として許されない。医療サービスを提供するかどうか、患者を誰にするかについて与信的な「意思決定」は存在しない。
だから医療機関に「与信管理」はなく、あるのは「債権管理」(保険組合への請求等の管理)だけなのだ。
このように「与信管理」と「債権管理」は別物なのであるが世間では同義語として扱われてしまっている。
これが「与信管理」の学問化への道を遠ざけているように思える。
与信管理というのは、「与える」という「意思決定」にフォーカスした学問であるべきであり、それはつまり「経営資源の配分」や「戦略」の問題である。
つまり「経済学」の領域なのだ。
「なぜ与信管理はアカデミックに相手にされないのか」でも書いたが、与信管理が社会科学として認知されるための近道は、こうした意思決定を経済学的に理論づけることだと思う。
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H.Izumi
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