【図解】海外反社チェック【入門】

米国の経済制裁と海外反社チェックの基本無料で利用できるスクリーニングリストも紹介



本コラムは反社チェック(コンプラチェック)や取引審査のご担当者向けに、アメリカの経済制裁に即して海外反社チェックの基本的な考え方と方法をご紹介するものです。制裁リストを無料でスクリーニングできる情報源もご紹介します。後半では信用調査報告書を活用した海外反社チェックのやり方についても紹介しています。 アクティブ株式会社 泉博伸



【1】アメリカの経済制裁の発動フローと主要制裁リスト

図解1)アメリカの経済制裁の発動フローと制裁リストの関係(海外反社チェック・海外コンプライアンスチェックの基本知識)。IEEPA法と制裁法のセットで大統領令(制裁プログラム)金融制裁(資産凍結)財務省外国資産管理局OFAC、SDNリスト(特別指定リスト)、商務省産業安全保障局BIS、エンティティリスト わかりやすく図で解説

 

 経済制裁とは、ある主体を対象に金融および貿易を制限・停止することをいう。その目的は相手を経済的に苦しめることにより、その政治・経済・軍事面での行動を変更させるためである。戦争に代わって国際紛争を解決する手段として位置付ける見方もある。

 

 一国全体を対象とする制裁(country based sanctions)のほか、具体的な個人や組織を指定し制裁リストに載せて制裁を行うリストベースド・サンクション(list based sanctions)スマート・サンクション(smart sanctions)といった手法がある。

 

 一国全体を対象とする制裁では当該国の善良な国民も苦しむことになるので、近年はリストベースド・サンクション(きめ細かくターゲティングできる”賢い制裁”という意味で「スマート・サンクション」とも呼ばれる)が主流となっている。

 

 上図は、米国における経済制裁の典型的は発動フローを示している。経済制裁は「大統領令」(Executive Order、略してEO)という形(文書)で発令される。つまり、大統領が発動する。

 

 そのベース(根拠)となるのが「国家緊急事態経済法」(International Emergency Economic Powers Act、略してIEEPA法)である。同法は、米国の国家安全保障・外交政策・経済に対する(国外での)異例かつ重大な脅威(unusual and extraordinary threat)が生じた場合、その脅威に対処するための権限を大統領に付与するものである。具体的には「外国為替取引」「金融取引」「米国内資産の使用・移転・輸出入等」などを禁止する権限を大統領に付与している。これが有事の際に大統領が経済制裁を発動し金融と貿易に制限を加えることができる根拠である。

 

 しかし、このIEEPA法だけでは、具体的に「誰に対して、どのような制裁を科すのか」が定まらない。具体的な制裁の内容を規定するのが「各制裁法」である。例えば、近時、企業のリスク管理担当者が注意を払っている人権分野においては「グローバル・マグニツキー人権問責法」が有名だろう。

 

 このように経済制裁(大統領令)は「国家緊急事態経済法(IEEPA法)」+「各制裁法」のセットを根拠とした上で発動される。経済制裁(大統領令)の具体例については後述する。

 

 さて、大統領令が発令されると各行政機関が動き出す。

 

 貿易制裁(輸出規制)では、商務省の産業安全保障局(BIS)が米国にとって脅威となる主体を「Entity List(エンティティ・リスト)」に記載して貿易を制限する(許可制にするが実質禁輸)。

 

 金融制裁(ドル決済禁止や資産凍結)では、財務省外国資産管理局(OFAC)が制裁対象者を「SDN List」に掲載する。この「SDNリスト」に掲載された者は、ドル取引が禁止され、米国内の資産も凍結される。米国民等はこれらの制裁対象者と取引してはならない。貿易制裁のみを受けるよりも遙かに影響が大きい。

 

 なお、「エンティティ・リスト」(商務省)にしろ「SDNリスト」(財務省)にしろ、制裁リストに掲載する主体を選ぶに際しては国務省(DOS)との協議が必要だ。

 このほか司法省(DOJ)が制裁違反者の訴追を、国土安全保障省(DHS)は所管する税関を通じて貿易の監視をするなど、経済制裁は多省庁にわたって執行される。

【2】反社チェック担当者にとって、まず必要なこと

図解2)人権侵害に対する経済制裁プログラム(グローバル・マグニツキー法)、GLOMAG、SDNリストの見方、(海外反社チェック・海外コンプライアンスチェックの基本知識) わかりやすく図で説明

 

 上図は人権侵害に対する経済制裁プログラムの発動フローを示している。前述の通り、経済制裁の基本法たる「IEEPA法」と、個別制裁法である「グローバル・マグニツキー人権問責法」を根拠に「大統領令13818」が2017年12月20日にトランプ大統領(当時)により発令されている。なお、グローバル・マグニツキー人権問責法の名称の由来や内容についてはネットで検索すれば豊富な説明にありつける為ここでは省略する。

 

 この人権侵害に対する経済制裁プログラムは、通称「グローバル・マグニツキー」などと呼ばれ、SDNリスト上ではプログラム名が「GLOMAG」と表記される。

 

 反社チェック担当者(人権デューデリジェンスを含む)にとって第一に必要なのは、SDNリストの検索結果を見る際に、この「プログラム」の意味を理解することである。

 

 上図にOFACのサイトで無料提供されているSDNリストのスクリーニングシステムの検索結果を示してある(同システムを含む米政府運営の無料検索システムについては後述する)。

 

 某主体について検索したところ上図の通りヒットした。画面右側に「List:SDN」「Program:GLOMAG」と表記されている。この意味が分からなければならない。Programとは経済制裁プログラムのことであり、ここでは「GLOMAG」即ち「グローバル・マグニツキー」と表記されている。つまり、この主体は人権侵害リスクのある主体としてSDNリストに掲載されていることがわかる(SDNリストは犯罪歴や違反がなくともリスクベースで掲載されることもある)。

 

 このプログラム名称(Program Code Key)は約80に及ぶが、暗記する必要はない。こちらのサイトに一覧表がある(OFACの検索ボックスの右上にリンクあり)。検索結果で表示されたプログラム名をコピーし、一覧表のページで「Ctrl+f」を押してページ内検索をすれば該当のプログラム(大統領令等)にありつける。ただし、どのような制裁なのかはその文書の中身を読まなければならない。以下がその例である(GLOMAG)。

 

【3】海外反社チェックのレベルアップ

図解3)制裁プログラムの実例(大統領令の文書) Blockingは凍結、Rejectingは取引拒否、経済制裁の根拠はIEEPAとマグニツキー。なぜ緊急事態なのかアメリカにどのような脅威があるかを説明。(海外反社チェック・海外コンプライアンスチェックの基本知識)

 

 上図は人権侵害に対する制裁プログラム(GLOMAG)の発令文書(大統領令13818)の一部である。全文はこちらから閲覧することができる(米財務省ホームページのPDF)。

 

 この大統領令について反社チェックご担当者に是非押さえておいて欲しいことがある。まず、この大統領令13818の発令時(2017年12月20日)には13の主体しか制裁対象とされなかった(文書のAnnex参照)。従って、発令時にSDNリストに追加されたのはその13者のみである。しかし、発令以降、この大統領令(GLOMAG)をベースとして、人権侵害の懸念者が発見された場合は、財務長官がその者を次々に指定し、SDNリストに追加していく可能性があるということも明記されている。現にGLOMAGでのSDN指定は248主体にまで増加している(2021年5月4日時点)。

 

 とすると大統領令の文書のどの部分が反社チェックの実務家にとって一番重要になるだろうか?(考えてみて欲しい)

 

 筆者は、Section1.(a)(ⅱ)が最も重要だと考える。それは、本制裁プログラムがターゲットとすべき者の特徴(制裁対象となる要件)を記載しているからであり、現在指定されていなくとも、このような特徴を持つ者がGLOMAGによって今後制裁されうることが示されているからである。従って、今回の反社チェック」においてはヒットがなくとも、Section1.(a)(ⅱ)記載の要件に近いような体質を持つ主体であったならば人権制裁の潜在リスクが高いとして営業部門(反社チェック依頼部署)にフィードバックできる。

 

 人権侵害リスクのある主体との取引を回避するためにも、まずは米国の制裁プログラムの対象となるような属性を把握しておくのは審査パーソン(反社チェック担当者)としてのレベルアップにつながると思われる。

 目下、必須となっている「人権デューデリジェンス」「人権侵害関与リスクの排除」へ対応するためにも重要である。

 

 

【4】アメリカの主要制裁リストと無料スクリーニング(検索サイト)

図解4)米国の経済制裁 金融(ドル)と貿易(モノ) 所管と制裁リスト。(海外反社チェック・海外コンプライアンスチェックの基本知識)

 上図で示した各リストは、米政府(商務省)が管理する「統合スクリーニングリスト(The Consolidated Screening List (CSL))」に格納されており無料で検索をかけることができる(CSLのサイトはこちら)。すなわち商務省、国務省、財務省の所管リストを横断的に検索できるので大変便利だ(*注)。筆者は通常はKeywordのボックスに調べたい企業等の名称を入力し検索をしている。名前で検索する場合は「あいまい検索(Fuzzy Name)」をオンにしている。

 

 なお、本格的な実務では米国の制裁だけを気にすればよいというものではない。それ以外の国や国連など国際機関の制裁リストもチェックする必要がある。従い、それらを格納した「商用データベース」の利用をお勧めする。

 

 ここでは本格的な「安全保障貿易管理」や「AML(マネー・ロンダリング対策)」というよりは、国内企業を対象とした反社チェック・信用調査の過程で関係者に海外主体が登場し、その海外主体がアメリカの制裁対象になっていないかなど最低限の無料チェックをする場面を想定している。

 

 主要リストについて簡単に説明を加える。

 

 財務省OFAC所管のSpecially Designated Nationals List (SDNリスト)は、上述の通りアメリカの経済制裁プログラムによって制裁を受け米国内の資産を凍結された者(団体・個人)のリストである。米国の個人や企業などはSDNリストに記載された者と取引することが禁じれられる。テロ、薬物取引・国際組織犯罪、兵器の拡散、人権侵害・ジェノサイドなどに関与するリスクがあるとされた「反社会的勢力」をリストアップしている。

  • (*注)筆者はSDNリストについては念のためOFACの管理する「Sanctions List Search」でも検索している(商務省が管理するCLSと財務省が管理するSDNのデータが完全に同期しているか否かの観点)。

 商務省BIS所管のEntity List(EL)は米国の国家安全保障や外交政策上の利益に反する活動を行う懸念がある企業等を商務省が指定しリストアップしたものである。上述の通り、経済制裁プログラムを受けて指定されることもある。米国から掲載者へ輸出することは原則として禁止される。米国産の物や技術が一定以上含まれていれば日本など米国外からの再輸出も規制の対象になる(再輸出規制)。

 Denied Persons List(DPL)は輸出管理規制に対して重大な違反をした企業等をリストアップしている(違反禁止顧客リストとも呼ばれる)。輸出特権等をはく奪されており、DPL企業との取引は原則不可とされている。

 Unverified List(UVL)は未検証エンドユーザーリストとも呼ばれ、輸出許可に際して検証ができず最終用途・需要者に懸念のあるユーザーのリストである。販路が不透明であり製品がどこに行き着くのか不明な(怪しい)ユーザー(主体)という意味である。エンティティ・リストに入る候補企業ともいえよう。

 

Consolidated Screening Listに格納されているリスト(使用に際してはご自身で同サイトの説明をお読みください)

■財務省 外国資産管理局(OFAC)所管リスト

Specially Designated Nationals List (SDNリスト)(*上記注をご参照)

・Foreign Sanctions Evaders List

・Sectoral Sanctions Identifications (SSI) List 

・Palestinian Legislative Council (PLC) List

・Correspondent Account or Payable-Through Account Sanctions (CAPTA) List

・Non-SDN Menu-Based Sanctions List (NS-MBS List)

■商務省 産業安全保障局(BIS)所管リスト

Entity List

Denied Persons List

Unverified List

・Military End User (MEU) List 

■国務省(DOS)所管リスト

・Nonproliferation Sanctions

・AECA Debarred List

 

【5】制裁対象者と取引したら自らも制裁される

図解5)制裁対象者と取引すると自らも制裁される。規制違反、制裁違反で経営危機、(海外反社チェック・海外コンプライアンスチェックの基本知識)

 自社(日本法人)が米国が制裁する者(非米国の主体)と取引した場合、どのような不利益を被るのだろうか。日本法人であれば、米国の法律は適用されないように思える。しかし、米国は国際基軸通貨であるドルの支配者であり、その地位を笠に着て外国に対して自国の法律を実質的に「域外適用」させることができる(している)。

 

 貿易にしろ投資にしろ国際間取引の大宗を占めるのは「ドル決済」であり、ドルの使用抜きに国際的なビジネスはできない。ドルの決済は最終的にはニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)にある米国の銀行の口座間の振り替えによって行う。日本法人が行うドル送金であってもNY連銀が関与することになるからアメリカの司法管轄が及ぶ(とするのが米国のロジックであり、このため「域外」適用とは考えていないようだ)。

 

 日本法人が取引する日本の銀行が制裁対象者とのドル決済に関与すれば、その銀行の米国支店(法人)の免許がはく奪される恐れがある。米国での銀行免許がはく奪されれば銀行としてドル決済に関与できなくなり国際的な金融業務が不可能となる。そのため日本の銀行は送金について制裁対象者が関与するか否かを厳重にチェックしている(AML/CTF、アンチマネー・ロンダリング、テロ資金供与防止業務)。日本の銀行にとって米国の制裁に抵触することは絶対に回避しなければならない。

 

 日本法人(日本人)が制裁対象者との取引であることを隠し、日本の銀行を通じて決済を行えばその銀行に対する詐欺罪が成立しうる。また詐欺を通じて貿易代金を収受するのだからマネー・ロンダリング罪(組織的犯罪処罰法違反等)に該当する可能性もあろう。

 

 また、日本法人であってもアメリカの制裁に違反すれば Entity List、Denied Persons List、SDN Listなどに掲載される恐れもある。SDN Listに名前が載ればアメリカで所有する資産が凍結される。役員等のアメリカへの入国が禁止されるかもしれない。

 

 エンティティ・リスト(Entity List)に掲載される企業の製品を使用する日本法人はアメリカの政府調達から排除される可能性もある。

 

 ちなみに制裁対象者と取引するなど「リスクが高い」と見なされた非米国の主体への制裁を2次制裁(secondary sanctions)とよぶ。 

 

 制裁リストに自社の名前が掲載されることにより信用が大きく失墜し、マスコミ等にもネガティブな報道がされレピュテーションが悪化する。リスク管理やコンプライアンスの失態について株主から訴訟を起こされる恐れもあろう。

 

 このような不利益を被らないためにも制裁リスト等により海外反社チェックを実践する必要があるのだ。

 

 

海外反社チェックのやり方

手持ちの信用情報を活用する方法

海外反社チェック(海外コンプラチェック)を行う 理由 「反社会的勢力」(社会の秩序や安全に脅威を与える勢力)、または「反社会的勢力の関係者」と認定されないため。 テロや犯罪組織など経済制裁、金融制裁の対象、社会を腐敗させる贈収賄やマネーロンダリングに関与するリスクはないか? Enforcement/Sanctions: 制裁リスト・規制リスト該非、Politically Exposed Persons:政府高官、公的要人リスト該非States-Owed Enterpris 国営企業に関する該非
海外反社チェックの方法、海外コンプライアンススクリーン(KYC、KYCC、Know your customer)のやり方 まず海外反社チェックの対象範囲である商号、代表者名、役員名、株主名(実質所有者)を確認する。登記、海外信用調査報告書(海外信用調査レポート)、ホームページのほか、相手から申込書(申告書、取引申請書)のフォーマットに記載してもらう。

 海外反社チェックの場合、相手の特定に苦慮するケースがある。日本のように簡単に全国の法人登記がオンラインで取得できる国ばかりではない。例えばアメリカでは商業登記は各州の所管であり、各州のウェブサイトにアクセスして各々利用登録しなければ閲覧できない。しかも閲覧できる項目や費用も州によって違う。

 

 そこで、海外反社チェックを行う前段として基本情報を把握するためには、海外信用調査書を取得するほうが手間が省けるし、安心である。ただし、すぐに取得できる既存レポートが古い場合も往々にしてある。ホームページ記載の役員とレポート記載の役員が相違している場合は、レポートが古い場合もあるので、その場合は新規に信用調査を発注するべきである(異変が起きた可能性あり)。なお、古い情報に基づくチェックも時として有用な場合がある。先に古い情報(役員等)でチェックし、後から出来上がった新規レポートで変化した部分だけチェックするというのも一案だ。

 

 チェック対象としては、商号、代表者、役員はあたりまえだが、株主(実質所有者)も含めなければならない。信用調査書に記載がある場合もあるが、できれば相手方に申告させることも一案だ。

海外反社チェックの方法、海外コンプライアンススクリーン(KYC、KYCC、Know your customer)のやり方 商号・法人名・本人氏名・代表取締役名・取締役名・株主・実質所有者を、コンプライアンスDB(商業データベース)で照合・スクリーニンする。エクスペリアン「KYCチェック」該非チェック

 チェック対象が定まったら、信頼できる商用コンプライアンス・データベースでスクリーニングをかける。

■制裁・規制リスト

 どんなデータベースかといえば、まず、各国が経済的に制裁し、取引を制限している企業・法人・人物のリスト(制裁・規制リスト)が格納されていなければならない。最も有名かつ影響力の大きい制裁・規制リストは、アメリカ財務省が指定する「SDNリスト」である(Specially Designated Nationals And Blocked Persons List)。SDNリストには、アメリカが安全保障上のリスクがあると指定した主体(テロリスト、テロ支援企業などの反社会的勢力)がリストアップされている。日本企業がSDNリストの対象者と取引すれば、アメリカ政府から反社会的勢力の関係者と見なされる可能性もある。このSDNリストには日本の主要な指定暴力団やそのトップも含まれていることはよく知られている。ただし、SDNリストには日本の暴力団構成員すべてが含まれているわけではないということに注意が必要である。あくまで主要団体のトップ層のみである。だから、日本の反社チェックをこのリストで済ませることはできない。

 

 このほかアメリカ商務省による輸出規制リスト(DPL、エンティティ・リスト等)、各国・国際機関の規制当局も取引を制限したり資産凍結対象としているリストが多く存在する。従い、チェック担当者が膨大な種類のリストを各々にチェックすることは物理的に不可能といえる。

 

 そこで、SDNリストを含む各国・各機関の膨大なリストを一括・一元的にスクリーニングできるようにしたのがコンプライアンス専用のデータベースである。(なお、アメリカについていえばInternational Trade Administrationが集約・管理するConsolidated Screening Listによって同国財務省・商務省等が規制する対象者を横断的にチェックできる。)

 

■PEPs 

 ほかに重要なのは「PEPsリスト(要人リスト)」である。PEPsとは、「Politically Exposed Persons」(政治的な影響力が高い人物=要人)」の略である。なぜ「PEPs(要人リスト)」をチェックする必要があるのか?

 

 第一に、犯罪収益移転防止法(犯収法)で、外国PEPs(外国政府の要人等)との特定の取引は「ハイリスク」として特別な管理が必要となっているからである(地位が高いほど汚れたカネを受け取るリスクが高いと想定、つまりマネーロンダリング関与リスクが高い)。従い、犯収法の適用業者は、相手が外国PEPsかどうかをチェックしなければならない。

 

 第二に、贈収賄リスク対策である。例えば、自社が起用する現地代理店、エージェントの周辺者がPEPsである場合、「贈賄」という犯罪行為によりビジネスを促進しようとするかもしれない。贈収賄は、社会を腐敗させ公正を歪める極めて反社会的な行為であり、弊社でも贈賄という反社会的行為を行う企業等を厳しく信用評価している。この見方は極端でもなんでもなく、先進国のコンプライアンス水準では「贈収賄加担企業」は反社会的勢力(社会公正を歪める勢力)そのものである。アメリカ政府が、FCPA(海外腐敗行為防止法)の域外適用によって米国外で贈賄行為を行った外国企業に巨額の制裁金を科しているのはその現れといえる。

 

 エージェント(代理店)の不正(贈賄行為)は起用した会社(自社)の不正と同一視されうる。つまり、自社が贈賄という反社会的行為を行ったとみなされる(レッテルを貼られる)。だから、エージェント(代理店)やその周辺者のPEPsチェックを行うのである。海外ビジネスを行う企業にとって「PEPs」のチェックは極めて重要なチェックなのだ。

 

 残念ながら、一般事業者にPEPsチェックの意義があまり浸透していない。

 PEPsデータも収録されているコンプライアンス・データベースを活用すべきだ。なお、どの商業データベースもそうだが、完全なリストなるものは存在しない。営業や現地担当者が持っているナマ情報も活用すべきことは言うまでもない(社長の父親が政府高官らしい等、酒席、雑談、日常の営業活動で収集した情報を社内共有する)。

 

海外反社チェック(グーグル、google)海外コンプライアンススクリーン(KYC、KYCC、Know your customer)でもネット検索、WEBチェック、海外企業風評チェック、海外反社調査

 海外取引先の反社チェックも、日本と同様にグーグル検索等のインターネットチェック(WEBチェック)を行うべきである。

 やり方は日本と同じである。ネガティブ情報だけ効率的に収集したい場合は「チェック対象(ワード1 OR ワード2・・・」などの複合条件で検索する。

 コンプライアンス専用データベースは、基本的には「制裁・規制対象となった」という「確定情報」である。一方、事件化はしていないが「疑惑」がある等の「噂」「風評」をチェックするにはインターネット検索が有効である。

 上記は、キーワードの一例である。なお、「捜査」対象となっても「逮捕」されず、「起訴」もされないといった場合も往々にしてある(国によって起訴猶予割合に大きな相違があると聞く)。「捜査対象になっているらしい」といった早い段階でのウワサの書き込み情報をキャッチすることがインターネット検索の意義である。また、起訴されないからといって、コンプライアンス上問題がないとはえいず、捜査・逮捕された経緯や噂が生じた背景を詳細に深追いする必要はある(二次調査、深掘り調査)。

 外国であっても「詐欺的商法」を駆使している業者は、日本と同じく「それなりの悪評」がネットで書き込みされる。だから「詐欺(fraud又はscam等)」も海外反社チェックのキーワードとしては入れたいところだ。

 このほか、途上国の相手をチェックする際は、「児童労働」「環境破壊」といったワードを加えてもよいかもしれない。

 

●海外反社チェック(WEB検索):ワード例(適宜ご使用ください。チェック漏れなどの責任は負いません)

(investigation or arrest or prosecution or lawsuit or penalty or sanction or injustice or violation or crime or conspiracy or fraud or dressing or insider or bribery or corruption or evasion or default or bankruptcy or laundering or anti-society or terrorist or gangsters or mafia)

 ↑日本語訳(捜査 逮捕 起訴 訴訟 処分 制裁 不正 違反 犯罪 陰謀 詐欺 粉飾 賄賂 汚職 所在不明 不払い 倒産 マネーロンダリング 反社会 テロリスト ギャング マフィア)

 

海外反社会的勢力チェックのポイント(コンプライアンススクリーニング)のフロー ①相手方の特定(本人確認、実在性確認)、②チェック対象のリストアップ、②スクリーニング(専用の商業DB、インターネット)、④結果・エビデンスの保存、