名刺情報を鵜呑みにすべからず! 

  反社チェック・信用調査の基本中の基本

~騙されるためのチェックにならないように~

信用調査の基本中の基本がある。

 

それは、相手が出してくる情報は「粉飾されている」「そう見せられている」という警戒心を持つことだ。

 

そして調査といえるからには、その「粉飾」「見せかけ」を「ひっぺ返す」試みをすることが必要だ。

 

この大原則は、私の行うセミナーや研修で毎度必ず参加者に伝えていることである。

 

 

さて。

 

名刺ほど、粉飾(でたらめ)の多いものはない。

 

 

①役職の粉飾:取締役でないのに取締役と表記している等。

 

②氏名の粉飾:過去の破産歴や犯罪履歴などを隠すために氏名の一部または全部に変更を加える。

 

③実在の粉飾:他人の氏名を勝手に名乗る。恐ろしいことだが、実際にある。

 

ほかにも色々ある。

 

 

反社チェックや信用調査というのは、相手に騙されないためにやるものだ。

 

つまり、騙しにかかってくる輩を、迎え撃ち見破るために行うものである。

 

 

本気で騙しにかかる輩というのは、

 

わざわざデータベースのチェックに引っかかる氏名を名刺には書かない。

 

(そもそも自分がフロントとして登場してこない。

 

 たまたま、正面切って登場してきて、データベースに”ヒット”したとしても、

 

 それは”ラッキー”なケースと思った方がいい)

 

 

差し出された名刺情報だけで「1次スクリーニング」を行うことは、無駄ではないが、

 

それで安心しては絶対にダメだということだ。

 

これは、非常に重要だ。

 

 

名刺情報に基づき、

 

管理部門で「1次スクリーニング」(何らかの商用データベース等で検索をかけること)を行った結果、

 

何もヒットがなかったとする。

 

これをもって、管理部門→営業部門に対し、

 

「何もヒットがありませんでした! 安心してください! よかったですね!」などと、絶対に言わないこと。

 

取返しのつかないミスリーディングを招くことになる。

 

単に「もらった名刺の氏名ではデータベースでヒットがなかった」。

 

ただそれだけである。

 

反社を見抜いたことには全くならない。

(こんな勘違いを相手は誘っている。相手の思うつぼだ)

 

 

 

実務上、取引判断の意思決定で最も大事なのは、

 

営業現場のリスク感覚である。

 

相手と接することで感じた、

 

ちょっとした「違和感」「不自然さ」。

 

これが本当に重要だ。

 

この違和感や不自然さが何なのか。

 

営業現場が感じ取ってくれた違和感・不自然さを、

 

大事にし、それを裏付ける調査をしてやるのが、管理部門の仕事だ。

 

自社でできなければ専門会社に任せればいい。

 

ただ、これは、データベースでのヒット云々といった、

 

白黒がはっきりする話ではない。

 

実際の取引審査では、このような白黒はっきりしないなかでの

 

意思決定がほとんどである。

 

 

管理部門が、たかだか、名刺氏名のデータベースチェックをした程度で、

 

「安心だよ!大丈夫だよ!」などと取引を後押しするような発言をすれば、

 

営業が感じた「ほんの少しの違和感」をかき消してしまうことになる。

 

営業部門のリスク感覚は弛緩する。

 

名刺チェックさえクリアすれば、商談をドンドンすすめていいんだ!

 

などと勘違いすることになりかねない。

 

このような会社のリスク管理プロセスは脆弱化し、

 

やがて取引先からの信用を失うだろう。

 

危ない会社とみられる。

 

 

詐欺集団(反社)に騙されて、

 

巨額のカネをアングラにまき散らす。

 

わざわざ、リスク管理にカネをかけている会社が

 

こんな失態を起こさないよう、

 

ここで述べた「信用調査の基本中の基本」を肝に銘じてほしい。

 

 

 

 

■せめて商業登記は確認すること。ただ、商業登記もロンダリングされる。

 

 

名刺情報だけではまったく信用できない。相手が役員を名乗っているなら、

 

商業登記を取って、本当にその人物が登記されているか確認するのは、最低限の作業である。

 

これすらやらないのなら、何にもやらないのと同じである。

 

 

しかし、その商業登記ですら、でたらめな場合がある。

 

①幽霊役員:生活困窮者などから身分証などを買い取り、名義だけの役員が登記されている。

 

②氏名洗浄:本当に氏名を変えている。名を変え、姓を変える。テクニカルに可能である。

 

③傀儡政権:登記されている役員は実在・実働しているが、フロントであり、裏に実権者がいる。

 

 

こうなると、単純なデータベースチェックではお手上げである。

 

しかし、より踏み込んだ調査をすれば、リスクに気が付くことができる。

 

現場での接触状況や取引内容、取引経緯なども踏まえた総合的なリスクチェックが重要だ。

 

私が案件を受けるときは、可能な範囲でこれらの背景情報をクライアントからご教示いただき、

 

調査に着手している。

 

 

 

■反社調査とは「関連性の調査」

 

Aを調べるのにAだけ調べても、反社に「関与」しているかを調べたことにならない。

 

関与先も調べないとダメだということだ。論理的に、当たり前の話である。(以下、長くなるので略)

 

 

・・・

 

どの会社でもやっている「1次スクリーニング」というのは、無駄ではなく、

 

やらないより、やったほうがいい。

 

ただし、その結果からいえることは、非常に限定されたことにとどまる。

 

単に「データベースにはなかった」ということだけ。

 

その結果を過大評価し、ミスリーディングをしては、絶対にダメだ。

 

 

本当によく出来る営業パーソンというのは、少しの違和感・不自然さを大事にする。

 

予算達成のプレッシャーの中でも、それを管理部門に正直に伝えてくる。

 

このような営業パーソンを擁している会社というのは、本当に優良企業だと思う。

 

弊社のクライアントもそのような会社が多く、いつも感心させられる。

 

 

 ・・・・・

●余話:信用調査・反社チェックは「社会科学」。

 

 この世界では、安易な「理系発想」は通用しない。

 皆が名刺や登記の情報で「1次スクリーニング」をやっていることが周知となれば、

 当然、悪だくみの輩は、それを回避しようと、リストやデータベースに無い氏名を使ったり、

 "クリーン"な人間をフロントに立ててくる。

 

 つまり、主体(貴社)の行動が、その後の周辺環境(反社の行動)を変化させるのである(=社会科学)。

 他方、物理法則は不変である。例えば、同じ方向と力でなげるボールはいつも同じ場所に落下する。

 ボールを投げるという作用が、その後の周辺環境を変化させることはない、と想定するのが

 自然科学である(理系発想)。

 

 だから、自社のやっているチェック手法の詳細は秘密にしておくのが常道である。

 周囲に知られると抜け道を探られる。営業に対しても、取引相手にはチェック内容の

 詳細を言わないように厳命しておくべきだ。

 まちがっても「こんなチェックをやっています」的なPRをしてはならない。

 

 私もセミナーやコラムで反社チェックのやり方の概論を述べることがあるが、

 残念ながら、ごく一般的な手法をご紹介するだけに留めている。コアな部分は非公開だ。

 

 理系発想といえば「ブロックチェーン」だ。

 何でも「ブロックチェーン」に載せたがる。

 聞いた話だが「信用情報」をブロックチェーンに載せようとする試みがあるようだ。

 残念ながら、この世界(信用調査・与信審査)の現実を無視した単なる「技術志向」にすぎない。

 

 信用情報のブロックチェーン化とは、ある種の情報共有プラットフォームで、

 信用情報を改竄されにくくし、間違った情報を流した者は、

 ブロックチェーンによりトレース(追跡)され、ペナルティが課される。

 それによって「正しい信用情報」が流通されるようになる、という発想らしい。

 

 他人の取り組みをとやかく言いたくはないが、これはダメな発想。

 現実をリサーチしたのか?

 信用情報(本当にコアな生情報)というのは、

 通常は社内だけで留まるものだし、人に伝えるとしても、

 「ここだけの話」「他言無用で」と、よほど信頼できる間柄で対面で行われるものである。

 そして情報源については秘匿するのが常識だ。

 当然「間違った情報かもしれないが」という断りを入れたうえで、極秘に伝わるものである。

 

 このような超センシティブな「信用情報」を、ブロックチェーンに載せて、

 だれが、いつ、どんな情報を流通させたのか、すべて証明され、間違っていれば罰せられる。

 そんな情報流通システムに対し、一体だれがコアな信用情報を供給しようとするだろうか?

 そんな情報網は、怖くて使えない。載せる情報は、どこでも入手可能な公知情報に限られるだろう。

 

 現実をまったくリサーチせず「ブロックチェーン」ありきで発想する「理系志向」。

 AIやブロックチェーン、データサイエンス。こんな言葉に踊らされすぎではないか?

 この世界は、そんなスマートにはいかない。

 

 派手にPRするのは良いが、この世界の現実をキチンをリサーチしないと、

 全く的外れと見なされてしまうリスクがあると思われる。

 泥臭い社会科学の世界もご理解いただいたうえで、

 超優秀な理系頭脳を活かし、新たな試みに挑戦してほしいと思います。

 

 アクティブ㈱ 泉