「経理・財務」と与信審査との違い




経理・法務と、与信審査(取引審査)は、全く性質の異なる業務だ。

 

私自身は、経理実務の経験はない。

 

多くの企業で、経理と法務、そして与信管理を兼務している担当者がいらっしゃる。

 

そういった方を差し置いて述べるのも気が引けるが、審査マン時代に感じていた私見をご紹介したい。

 

 

 

経理・法務というのは「確認」の仕事だ。

 

①営業が行う・行おうとするビジネスを正確に把握する(事象の確認)

 

②それを会計基準や関連法規に照らし合わせる(規定・基準や法規の確認)

 

③自分で解決できない場合は、顧問税理士・顧問弁護士等に正確に事象を伝え、

 

 専門的な助言・指導を仰ぐ(専門家への確認)

 

④それを営業に正確に伝えて、適正な処理を行わせる。

 

とにかく各部署と密にコミュニケーションしていた。

 

経理というと黙々と電卓を叩くイメージだが、

 

「確認」「確認」のために、人と話す時間の方が長い仕事だと思われた。

 

 

このような性質の仕事であるから、

 

営業部からの問い合わせに対し、自分で対処できない場合、

 

「顧問税理士に確認したら、そのような処理にしろと言われましたので」

 

「顧問弁護士に確認したら、このような契約条項にしてくださいとのことでした」

 

と回答することは、まったく適切な対応であり、それが仕事である。

 

業務の目的は会計基準や税法・関連法規に沿った「正確・適法な処理」であり、

 

確実な「確認」こそ最も重要な要素なのだ。




一方、与信審査(取引審査)は、まったく性質を異にする。

 

例えば、貴方が与信審査担当だとしよう。

 

営業からある取引の稟議が提出されてきた。

 

その稟議書に対し、審査担当者として、

 

かなり厳しい審査所見(審査としての意見)を表明したとする。

 

営業サイドが、どうしてもやりたいビジネスであったとする。

 

貴方の審査所見で、社内が通せない可能性が出てきた。

 

すると、担当の営業が上司を連れて怒鳴り込んでくるとする。

 

「なんでこんなこと書くんだ。

 

 相手は自己資本が50%もある取引先じゃないか、問題ないじゃないか?

 

 お前は売上を減らしたいのか?」

 

このような強烈な抗議に対して、審査パーソンの拠り所はあるのだろうか?

 

経理でいう「会計基準」や「税法」のようなものは無い。

 

法務でいう「関連法規」も存在しない。

 

顧問税理士や顧問弁護士に聞くような話ではないし、回答もできない。

 

 

唯一の拠り所は、「自分のロジック」しかないのだ。

 

 

営業からの強烈なクレームに対して、自分のロジックを唯一の武器

 

として説得しなければならないのだ。

 

 

その唯一の武器である「自分のロジック」を組み立てるためには、

 

少なくとも、取引先の財務内容、事業内容、業界環境などの理解、

 

その取引の自社経営戦略との適合度、必要な資本と資本効率、

 

自社のリスク許容度なども理解した上でなければならない。

 

 

具体的な事例は別記予定だが、

 

こういったロジックを組み立て、営業に疑問を呈すことは、

 

自分自身の成長になるし、営業や会社のためにもなると思う。

 

なお、このような与信審査の業務が、昨今話題のAIによって

 

どのようになるのかについても私見を述べています。

 

AI(人工知能)時代の与信管理・与信審査パーソンの生き残り策

 

をご参照ください。

 

 

以上、経理と法務、そして与信管理を兼務しているご担当者を

 

差し置いての私見で恐縮である。

 

性質の異なる業務を同時に回していくそのような方々を、

 

つくづく尊敬せざるをない。

 

(記事:アクティブ株式会社 泉博伸)