決算・財務情報が不明な場合の与信判断




与信管理や取引先管理において、取引相手の信用調査は必須だが、

 

残念なことに決算・財務情報が入手できない場合が多い。

 

西欧諸国は未上場会社も含めて公的機関から情報は取れる。

 

中国やタイも公的機関から未上場会社も含めて一応財務情報は取れる(内容の詳しさや信憑性は別)。

 

しかし、それ以外は、日本も含めて未上場会社の決算・財務情報を

 

取得できない場合も多い。

 

また、外国企業については、入手できたとしてもそれが信頼できるのかという疑念もある。

 

決算・財務情報が不明な場合、どのように与信限度額(与信枠)や社内格付を

 

設定したり、取引可否を判断すれば良いのか途方に暮れてしましがちだ。

 

■定性調査・分析:第1次スクリーニング

 

決算・財務情報が不明な場合、それ以外の判明している情報をもとにした

 

「定性調査・分析」を行うほかない。

 

定性調査・分析には、2つの段階(ステップ)がある。

 

第一は、反社性の調査・分析だ。これは相手の素性を調べる調査で最も根本的なチェックである。

 

具体的には、国内であれば暴力団等に関連する企業であるかどうかの調査(反社チェック)、

 

海外であればマフィア関連や取引規制対象者(SDNリスト該当者)等に該当するか否かのチェックだ。

 

詐欺や汚職など重大な経済犯罪やコンプライアンス違反の履歴があるかどうかの確認ももちろん必要だ。

 

 

反社性の調査・分析は、そもそも取引相手として素性に問題があるかないかのチェックである。

 

本来、決算・財務情報を入手できる場合でも行うべきであるが、

 

決算・財務情報が入手できない場合は、なお更、これをしっかりやらなければならい。

 

逆に言えば、これをしっかり行っていれば、有事の際の説明責任も果たしやすくなる。

 

この反社性の調査・分析によって「リスクあり」となれば、即刻取引は謝絶・拒否すべきだ。

 

ビジネスとしてかかわるだけで違法となるリスクがあり、コンプライアンス上、

 

重大問題となりかねないからだ。(弊社の反社調査サービスはこちら

 

 

■定性分析・調査:第2次スクリーニング

 

第1次スクリーニングである反社性の調査・分析を無事にパス(該当情報無し)した後は、

 

通常のビジネスリスクの観点での検討である。

 

決算・財務情報が収録されていない信用調査レポートでも、以下の事項は記載されている場合が多い。

 

それをもとに判断していくほかない。

 

●信用調査報告書からわかる事項

 ①資本金の大きさ

  企業の「格」を測る上で重要である。

 

 ②従業員数の多さ

  企業の「格」と同時にその会社の「キャパシティー(処理能力)」を測る上で重要である。

 

 ③業歴の長さ(設立年月日)

  何年の風雪に耐えている会社か。長くても倒産する場合があるが組織としての経験の蓄積度合を測れる。

 

 ④所在地の変更履歴

  記載されている住所でグーグルマップ(ストリートビュー)を必ず見るべきである。

  良い場所・広い場所に移転しているならば業容が拡大しているとも読める。

  悪い場所・狭い場所に移転しているならば業績が悪化しているとも読める。

  頻繁に移転しているならば要注意。

 

 ⑤株主・関係会社

  株主・関係会社の方が情報が入手しやすければ、それを参考すべきである。

  株主・関係会社がしっかりしていればプラスに評価できる。 

 

 ➅代表者の就任年月日

  経営者としての経験年数は重要である。経営者としての能力と経営の安定度が類推できる。

 

 

●担当部局(担当者)が肌で感じている情報

 取引相手のナマの情報は担当部局(担当者)が一番持っている。

 

 社内でのコミュニケーションを円滑にし、現場と管理部門で以下のような情報を

 

 共有して判断していくべきである。

 

 

 ①ビジネスの将来性

 

 ②製品の品質や技術開発力

 

 ③バックオフィスを含めた対応力

 

 ④経営者や相手方担当者の素質

 

 ⑤取引先の質や数(営業基盤)

 

■取引判断

以上、掲げたような定性的な事項について、「弱い部分」と「強い部分」にふるい分けし、

 

「強い部分」が「弱い部分」を上回ると判断できれば「取引可」とするといった具合である。

 

例えば、

 

「業歴は浅く資本金も小さいが、技術力は高くポテンシャルがあるので取引を推進」(弱み<強み)

 

「代表者の経営経験こそ乏しいが、熱意や向上心があり、人としても信頼できるので取引をしてみる」(弱み<強み)

 

といった判断である。

 

まず、取引を「やるのか」「やらないか」を以上の定性分析から決めるのである。

 

■与信限度額(与信枠)の設定

では、与信限度額(与信枠)をいくらに設定すべきであろうか。

 

具体的には以下のうち小さいほうの金額である。

 

①取引上必要となる与信限度額(回収条件・取引金額から算定される最高与信額の予想値)

 

②自社の財務体力から許容できる損失限度額

 

決算・財務情報がわかっている相手であれば、例えば相手の資本金額の何%までとか、

 

買掛債務の10%は超えない、といった観点からも検討できるが、財務不明ならそれができない。

 

こうした場合は、自社の財務体力で制限をかける。

 

その制限の範囲内で、営業方針や取引利益も勘案しながら決めてゆくのである。

 

「自社の活路はインドネシアしかない。インドネシアの取引先は多少リスクを取っても拡大していく」

 

「リスクは相応に高いが、それに見合うだけの利益があげられる」

 

となれば、

 

自社の財務体力と相談しながら当該取引に必要な与信枠を目一杯承認することもあろう。

決算書が取れない、入手できない場合の与信判断 信用評価

(記事:アクティブ株式会社 泉博伸)