最強ランナーの極意と与信管理


筆者はマラソン日本記録保持者の大迫傑さんのファンである。

 

大迫さんが早稲田大学1年生の時、ルーキーながら箱根駅伝1区をスタート直後から一気に飛び出し、そのまま後続に大差をつけて鶴見中継所でタスキを繋いだ。

 

(この2011年の箱根駅伝は早稲田大学が総合優勝。先立つ出雲駅伝、全日本駅伝も優勝しており「駅伝三冠」を達成した)

 

筆者はその1区を沿道で観戦。大迫さんの余りに綺麗なフォームをナマで観てすっかり魅了されてしまった。

 

当時は筆者も三十路ながらソコソコ走り込んでいたが(10KM:37分台で走れていた)、次元が違いすぎて走り方のマネはできないと諦めたものである。

 

以来、大迫選手が主戦場に選んだトラックでの戦績をフォローするのが楽しみとなった。

 

大学3年(2012年)の関東インカレ5000m優勝。

 

学生最強として同年6月の日本選手権10000mに出場。同レースはロンドン五輪代表の座がかっていたが、ラストで佐久長聖高校の先輩である佐藤悠基さん(当時日清食品)に競り負け2着となった。ロンドン五輪出場は叶わなかった。地面を叩いて悔しさを露わにした姿に、私は心を打たれた。半端ない本気を感じたからだ。

 

大学4年(2013年)には10000mで日本人学生最高記録をマーク。

 

卒業後は渡米し世界最高峰のランナーが集うナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加。

 

スピードに磨きをかけトラック5000m、3000mの日本記録を達成(現保持者)。

 

2016年には日本選手権10000mと5000mをダブルで優勝し、同年のリオデジャネイロ五輪に両種目で出場を果たした。

 

2017年にボストンマラソンでマラソンデビュー(3位。瀬古利彦さん以来の表彰台)。

 

2018年10月、マラソン3戦目となるシカゴマラソンで2時間5分50秒の日本新記録をマーク。同学年の設楽悠太さん(ホンダ所属、東洋大出身)が同年2月にマークした日本記録を更新した。

 

記憶に新しい2020年3月の東京マラソンでは自身の持つ日本記録を21秒更新。ゴールテープを切る瞬間、「鬼の形相」で何かを叫びガッツポーズしたシーンに心が震えた。

 

 

こうした大迫選手の輝かしい戦績を筆者の拙い文章でしかも断片的に綴るのは誠に恐縮な話である。

 

ただ、こうしてざっとでも整理してみると、改めて大迫さんは日本最強のランナーであると感じる。

 

その最強ランナーが日本記録を更新できたポイントを次のように説明した(東京マラソンゴール後のインタビュー)。

 

 

「自分のキャパシティ以上で走ってしまうと潰れてしまう。自分の体と対話しながら走れた」

 

 

すわなち自分のキャパシティーを知ること。レースの時点時点でキャパシティーの使用状況を確認しながらペースを調整した。ということだ。

 

この「レース・マネジメント」の極意は、まさに与信管理の極意に通じるものである。

 

どれだけの与信限度額を設定するか。それにはまずもって自社のキャパシティー(財務体力や資金繰り等)を知らなくてはならない。

 

そして自社が現状どれだけの与信残高を抱え、キャパシティーに対してどれだけ使用しているのか(与信枠使用率)を適時に把握しなければならない。

 

自社のキャパシティーを把握し、それに応じた適切な与信限度を設定する。使用率をモニターし、キャパオーバーとならないよう限度を遵守する。

 

与信限度額の増額(マラソンでいえばペースアップ)をする場合は、都度その時点のキャパシティーと対話し見極めていく。

 

まさに与信管理はマラソンではないか?

 

そうなるとマラソンや長距離レースの見方も変わってくる。

 

ますます面白くなる。

 

ランナーから学べることも多いはずだ。

 

だから沢山レースが観たい。

 

コロナの収束を願うばかりである。

 

アクティブ株式会社 泉