日産の虚偽記載 「法専門家」の見方に疑問 

 ~有価証券報告書は誰のためにあるのか?~




日産ゴーン氏の報酬虚偽記載に絡んで、弁護士や金融法学者等の「法専門家」が様々なコメントをしているが、

 

その中には「有価証券報告書」の意義や自動車業界の実態をわかっているのか?

 

という疑問を禁じ得ない方々も残念ながら存在する。

 

すなわち、一部の「法専門家」は、

 

ゴーン氏報酬の虚偽記載は、「投資者」の判断に「重大な影響はあたえない」という発言をしている。

 

 

たしかに、有価証券報告書は、第一義的には、「投資者」のためのものである。

 

しかし、実態として投資者以外にも有価証券報告書の記載内容に基づき

 

重要な意思決定をしている主体が多々ある。

 

自動車産業で言えば、まずもって自動車メーカーからの苛烈な原価削減要求に血反吐を吐きながら応えている下請業者だ。

 

 

周知のように、自動車産業においては、毎年毎年、絶え間なく原価の削減をメーカーから要求される。

 

2次下請、3次下請は、まじめにやってもほとんど利益が出ない会社も多い。

 

原価削減のためには絶え間なく設備投資を行わざるをえず、借金漬けだ。

 

いつ倒産してもおかしくない、生かさず殺さずの状況で耐えしのいでいる。

 

そういった中小零細企業の経営者や従業員も自動車メーカーの有価証券報告書を見ている。

 

 

「原価削減が厳しすぎる。家族や従業員に贅沢をさせてやれない。

 

 でも、世界的な自動車メーカーの社長が、相対的には高くない報酬しかもらっていないなら、

 

 我々も歯を食いしばっても耐え抜こう。要求にこたえるために設備投資しよう。」

 

 

このように有報の報酬を見て納得して耐えて、経営判断している中小の経営者や社員は多いだろう。

 

 

こうした自動車産業の現実を一部の「法専門家」は理解しているのだろうか?

 

 

たしかに、金商法の罰則を適用するかどうかの局面だから、

 

法の第一義的な趣旨である「投資者保護」の観点(法解釈)に終始するのは当然だろう。

 

 

しかし、「法律構成」(法のあてはめ)云々のまえに、「価値判断」がある。

 

価値判断として、血反吐を吐くような思いで耐えしのいでいる下請業者(=ステークホルダー)

 

を欺くような行為は、たとえ虚偽記載の金額が僅かであろうとも許されないと考えるべきではないのか。

 

 

繰り返しになるが、有価証券報告書を利用するステークホルダーは、「投資者」だけでない。

 

有報に基づき、重要な意思決定(納得)をしている主体が多々ある。

 

そういった実態を踏まえたうえでの価値判断があって、その上での法律論ではないのか?

 

少なくともメディア等ではそこまで視座に入れたコメントが欲しいものだ。

 

 

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アクティブ株式会社 泉博伸