誰しも人に認められたいという欲求はある。
特に経営者となれば、自分の能力や経験値、ならびに自社の商品・サービスが業界や市場で承認されることが、自社の存続に必須であることから、承認欲求がツヨメであることは悪いことではなく、むしろ自然といえる。
こうした経営者の持つ承認欲求に付け込む商法、というか営業アポの取り方が昔から横行している。
「取材させてください」 「セミナー講師になってください」 「原稿を執筆してください」「動画に出演してください」といって接近してくる営業手法(商法)だ。(最近では貴方の会社を買いたい会社があると資本提携を突然持ち掛けて営業をかけてくる如何わしい営業活動を行うM&A仲介会社もいるが、それについては別稿で述べるとする)。
弊社(筆者)も、このHPの問い合わせフォームから、何度もこのような「投稿」を受けたことがある。
玉石混交といっては上から目線だが、はっきりいって迷惑千万な類もある。
断っておくが、「与信管理に関するコンサルティング」を軸に仕事をしている弊社(筆者)が、そのような問い合わせに、おいそれと応じるわけがない。
なぜならば、記事の執筆なり、講師なりを引き受けるということは、重大な「与信」行為であるからだ。従い、最低限以下①②の信用調査・反社チェックを行わなければならなず、手間とコストがかかり、まったく割に合うものではない。だから原則、内容を見るまでもなく問い合わせには応じない。
■信用調査・反社チェック対象(最低限)
①雑誌発行会社・セミナー主催者
②雑誌などに広告があれば、その広告主(その商材についても)
①については、当該雑誌発行会社やセミナー会社が後々倒産でもしようものなら、「あんな倒産会社のセミナーに登壇したなんて、会社を見る目がないな」などと馬鹿にされてしまう。弊社の沽券にかかわる。だから、当然慎重なチェックと判断が必要となる。現地確認(=運営会社への訪問と面談)も必須となる。
②は、詐欺の片棒を担ぐことにならないために行わなければならない。有名な媒体でも、過去に消費者庁まわりの重大な行政処分を受けた履歴のある者を平気で広告主にしている。そんな媒体に記事を提供することは、詐欺的商法へ加担していると指摘されかねない。
そもそも唐突に「取材させてください」 「セミナー講師になってください」 「原稿を執筆してください」などと接近してくるのは、不自然であり、怪しい。
何らかの形で利用しようと企んでいるから、わざわざコンタクトしてくるのだ。本当にあなたのこと(筆者のことも)をリスペクトして近づいてくるわけではない。
明確な商業的動機があるから近づいてくるのだ。たとえば、①雑誌の購読(有償)、②広告の出稿(有償)、③コミュニティーへの参加(有償)、④ビジネスマッチングのネタにされる(=後々色々な商材の売込みにあう)など何らかの目的があるはずだ。
たとえこれらの出費がなくとも、チェックの手間などを考慮すると、こちらが得られる想定メリットは、むしろマイナスである。コスト・リターンの原則からも、このようなお願いに応じる合理性はなく、原則断るのが経営資源の有効利用につながる。筆者はそう考える。
怪しい営業手法で接近を受けたら関わらないのが大原則。街中でいきなり名刺交換を迫られるキャッチ商法と同じと思った方がいい。
反社チェックをしていると、対象の経営者がホイホイといろいろな媒体に登場したり、怪しい会社の主催するセミナーに登壇しているケースがある。
特に起業したての経営者が「取材」「講演」「執筆」などとキーワードを出されて舞い上がってしまうのはありがちな話だ。それに付け込んでくるのである。
自分のブランディングや自社の知名度アップを意図して積極的なのは理解できるが、露出する媒体や登壇する機会は慎重に選んだ方がいい。
筆者もそうだが、筆者以上にシビアに経営者を評価する審査パーソンもいる。チャラチャラとメディアに露出する経営者をそれだけで警戒する方もいる。
結論。信用調査・反社チェックは貴方を守るもの。あらゆる場面で必須だ。
それが面倒ならば、最初から全て断ること。新参者と関係を持たないこと。
以上。
H.IZUMI