名門企業・大企業のコンプライアンス重大違反をどう与信評価するか?




 

昨今、神戸製鋼所や日産自動車など日本を代表する製造メーカーがコンプライアンス上の問題に揺れている。

 

こうしたコンプライアンス上の問題発覚を、与信管理(与信審査)においてどのようにとらえるべきなのか。

 

 

一つ参考になるのが欧州の信用保険会社の考え方だ。

 

少し遠回りになるが、欧州の企業では、販売取引において取引信用保険(クレジット・インシュアランス)

 

を付保するのがスタンダードだ。

 

日本では、取引信用保険は保険会社に「毒まんじゅう」を食べてもらう程度にしか考えられていない。

 

つまり、アブナイ会社へのリスク債権を保険会社に肩代わりしてもらう程度の認識だ。

 

 

ところが欧州における取引信用保険は、俗に「与信管理型」と言って、

 

審査機能や与信限度の設定といった与信管理業務を「与信審査のプロである保険会社」

 

に任せるという発想で取引信用保険を活用している。

 

 

「いくら保証(補償)してくれるか」というのは、あたかも当該事業会社の「社内的な与信限度額」

 

と同じ位置づけである。

 

顧客たる事業会社と保険会社が同一の企業のように同じ利害関係に立ち、情報交換しながら、

 

取引してもしょうがない相手には与信枠を設けず、貸倒を防ごうという発想なのだ。

 

保険約款上もそうなっている。

 

保険料は、アウトソースする審査機能への対価(手数料、業務委託料)として捉えられる。

 

 

前置きがながくなってしまった。

 

以下は、これまでの実務経験からの感覚的な話であるが、

 

いくら東証1部クラスの大企業・名門企業であっても、こういったコンプライアンス上の重大問題

 

が発覚した場合、その瞬間に特に欧州の信用保険会社は、与信限度額(補償枠)を削減するのではないか?

 

欧州は、コンプライアンスにうるさい国であり、コンプライアンス上、重大な問題がある企業に

 

与信限度額(補償枠)を設定するのは不適切だという考え方があるからだ。

 

 

日本人の感覚だと、例えば東芝がそうだったように、不適切な事象が発覚した数年前の当時に、

 

ここまで事態が悪化するとは予想できず、したがってその時点で与信限度額(補償枠)を削減する

 

のは、おかしいと思うだろう。

 

ところが蓋を開けてみると、数年後には、実質的に解体状態となってしまった。

 

この間、一企業の経営戦略として沈みゆく会社への取引に終始していては、

 

相手は倒産はしないかもしれないが、業績はじり貧であり、共倒れを招きかねない。

 

そもそも、今までの業績は不正を前提としたものであり、見かけ上のものであったのだ。

 

従って、当該問題企業との取引を縮小し、直ちに新規の顧客への取り組みを積極化すべきである。

 

保険会社の与信限度額の削減は、こうした経営戦略転換への「アラート」「助言」

 

として捉えることができる。

 

事態が深刻化する数年も前に、こうした重大なアラートを出してくれる。

 

こうした機能が真に期待できるならば、これほど心強い与信審査部門はないだろう。

 

外部の強力な与信審査部門として活用するのである。

 

 

*なお、これはあくまで個人的な経験に基づく印象論・仮定論であり、

 個別具体的な企業や保険会社の話とは無関係である

 欧州系の保険会社が必ずそうであるというわけではない。

 

保険会社に限らず、一般の与信審査パーソンにとっても、

 

相手の重大な法令違反・コンプライアンス違反については、深刻にとらえる必要がある。

 

コンプライアンスの問題が発覚して直近数年は持ちこたえたとしても、

 

そういった事象が明るみに出れば、業績やイメージを立て直すのは至難である。

 

発覚した問題は氷山の一角であり、表面化されていない重大リスクが他にも潜んでいるかもしれない。

 

 

「おそらく、そう遠くないうちに経営危機・倒産危機に瀕するだろう。」

 

そのような想定を前広にするのがリスク管理にとって重要であると思われる。

 

 

顧客、取引先、従業員、株主などステークホルダーを裏切る行為は、

 

与信審査の上で最大の信用不安要因であり、厳しく評価していく必要がある。

 

(記事:アクティブ株式会社 泉博伸)