取引信用保険の意味と役割

与信管理の本筋から考える個別の債権保証(保証ファクタリング)に対する優位性

(弊社は取引信用保険の代理店ではありませんので、以下は客観的な立場での私見です)。




先般、ある大手商社の与信管理部門の方が弊社を訪ねて下さった。

 

その際、営業現場レベルでは、個々の取引判断において、

取引信用保険の付保額などの保全を意識させるのは良くないのではないかという話がでた。

 

まさに、その通りだと考える。

 

別稿、「与信管理の『一括借り上げ』思考 リスク・リテラシーの欠如」でも述べた通り、

「保証が付くから取引をする」という発想は、

「家賃保証があるから、シェアハウスを建てる」といったレベルのリスク・リテラシーである。

 

消費者であれば保護や温情は受けれるかもしれないが、

商売のプロの世界で、「保証があるから取引する」レベルの与信リテラシーでは、

温情どころか、善管注意義務違反さえ問われかねない(企業価値経営違反)。

 

特に、商社や製造業の営業パーソンは、ビジネスをするのに「担保」に頼ってはならない。

これは、弊社コラムで再三強調していることである(参照コラム「与信管理教育のあり方」)。

 

一方、その訪ねてくださった商社の方とは、

取引信用保険は、与信ポートフォリオ全体の信用コストの調整という意味で、

意義があるものだという認識も共有させてもらった。

 

すなわち、「ビジネス自体の意義」によってテイクした個々の与信リスクの分布を所与として、

その分布から生じうる信用コストを調整(転嫁)するのが取引信用保険の役割なのだ。

 

つまり、個々の取引判断において信用保険が付くからビジネスをするという発想ではなく、

結果として保有するであろう全体の信用リスクのコストを調整するという点で取引信用保険の意義があるのだ。

ポートフォリオのリスク調整が役割なので個々の取引判断よりレイヤーが一段上なのだ。

(実情は、個別の要注意先に対し、いくら「枠」をつけてくれるかで保険会社を選ぶ傾向が多いが、

 本来は、第三者である保険会社が客観的に与信ポートフォリオ全体のリスクを評価してくれること自体に意義がある)

 

一方、取引先一本一本を保証する債権保証(保証ファクタリング)の発想では、

どうしても、保証が付くから取引をするといった、「一括借り上げ・家賃保証」の思考に陥ってしまう。

 

債権保証が保全するのは、たかだか「債権」だけである。

与信とは、債権を含む経営資源の投下であり、会社の未来を投じることだ。

債権のみが保証されることが、個別の取引判断の重要な要素とはなりえない。

これも、「与信管理の『一括借り上げ』思考 リスク・リテラシーの欠如」に記している。

 

このように考えると、取引信用保険のほうが、与信管理の本筋に適合しているように思える。

 

取引先一本一本の債権保証が意味があるとすれば、撤退戦略の時だろう。

もう、その取引先とは取引しない。残っている債権をカバーしながら撤退する。

このような時こそ活用の余地があると考える(そのような先に枠はつかないかもしれないが)。

 

なお、弊社は信用保険の代理店ではないので、これは客観的な立場での私見である。

 

上記、ご関心があれば、ぜひ「研究サロン」で。

(記事:アクティブ株式会社 泉博伸)