■事業会社の与信ポジション(販売取引)
与信の残高というと、まず債権残高を思い浮かべる。
しかし、これは限定的なケースにしか当てはまらない。
例えば銀行の貸出だ。
銀行の貸出の与信ポジションは、いうまでもなく貸出債権額。
文字通り貸出金額がすなわち与信ポジションとなる。
一方、事業会社は、狭義では売掛債権が(販売取引の)与信ポジションであるが、
相手が倒産した場合に被る損害は、債権の焦げ付きだけに留まらない。
端的に言えば、受注残も与信ポジションなのだ。
受注に応じてすでに生産を始めている商品は、相手が潰れてしまえば、
宙に浮くことになる。
仮に当初と同じ値段で他に売却できたとしても、それはたまたまである。
急ぎの売却で生じた損は、もとはといえば与信リスクによって生じた損害である。
従って、納品前段階で与信ポジションを取っていることに注意が必要である。
与信管理=債権管理という考え方は、受注から納品(債権発生)までのタイムラグ
が極めて短い取引に成立する限定的な概念であることに注意したい。
銀行貸出や、ネットのダウンロード販売はこれにあたる。
受注➞納品までのタイムラグが長い取引においては、
債権が発生後の期間よりも、受注残としての姿が長い場合もある。
その間に相手が倒産してしまえば、ロスを被る。
汎用品であれば転売が効くが、それは副次的な問題だ。
この場合、与信管理は、債権+受注残で管理しなければならない。
さらに内示に基づく見越し生産の場合は、見越生産分も含まれよう。
内示を受けていた先が潰れてしまえば、見越して作った労力は無駄になる。
法律上、その損害を相手に請求できるかは別問題だ。
リスク管理として、どこまで見るべきか。
そこは各社で考えなければならない。
ちなみに三菱商事は、有報記載の「信用リスク」の箇所に、
明確に「成約限度」を設定している旨を記載している。つまり受注残で管理しているのだ。
理想的には、三菱商事のように、より広くリスクを捉えるべきだが、
現実としてシステムの制約や手間もかかる。
まずは重要な取引先に限定して、管理の精度を高めていくのが現実的と考える。
(記事:アクティブ株式会社 泉博伸)
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