犯罪などで得た不法原因の利得について「申告納税義務」を課すことは、憲法における「不利益な供述の禁止(自己帰罪拒否権)」に抵触するのではないか?
わざわざ自分にとって不利なことを税務申告を通じて国に供述するのは、憲法に違反するという議論である。
この議論につき最も納得感のある説明は、以下の東京高裁の判決である。
「申告納税制度は(中略)、納税義務者に所得の申告を求めるものではあるが、その原因たる犯罪行為の告知を求めるものではないから、該制度が右憲法の規定に違反するものとは解しえない・・・・。
税法に規定する手続きは、もっぱら徴税の目的のためのものであって、刑事事件の捜査のための手続きではないのであるから、納税義務者が犯罪行為による所得について、所得そのものの申告をも自己の刑事責任上不利益な供述として拒否することは、公共の福祉に反する自由権の濫用と言わなければならない」
上記判例を含む税法上の所得概念について優れた考察を行っているのは、次の論文である。
茂木繁一氏(当時税大教授)「税法上の所得概念の解釈について -不法原因等による利得の課税をめぐってー」税大論叢1973年3月
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/07/57/ronsou.pdf
H.Izumi