「チャプター11」(米国連邦倒産法11章)
=「民事再生法」「会社更生法」は誤訳
アメリカ企業の倒産が報じられる際、
「○○社がチャプター11(=日本の民事再生法に相当)を申請」
「日本の会社更生法に相当するチャプター11の手続を申請」
などと表記する記事がほとんどである。
しかし、これは誤訳であり購読者にミスリーディングをもたらしかねず正すべきだと思われる。
倒産手続は、①倒産後の経営主体が誰か?②担保権が実行可能か?の2大要素によって特徴づけられる。
下表のとおり、これら2大要素においてチャプター11と日本の民事再生法と会社更生法とは明らかに異なる。
チャプター11(米国連邦倒産法11章の再建手続)は、債務者を経営主体としながら(=DIP、Debtor in possession)自主的な再建を強力にバックアップする法的な建付けになっている。
申立と同時に「オートマティック・ステイ(自動停止)」の効力が生じるのが特徴であり、それにより担保権の実行等が制限される。
つまり、より再建志向であり、これがためにアメリカ以外の世界の企業もアメリカのチャプター11を利用したがる。
このチャプター11を、担保権の実行が原則可能な「民事再生法」と同じものとして訳してしまうと、チャプター11の特色(強力な再建支援)を全くかき消してしまいミスリーディングをもたらす。
一方、会社更生法については、担保権の実行が制限される点でチャプター11と似ているが、原則的に管財人が選任される点でDIP型のチャプター11と異なる。
もっとも、実際上は、民事再生法であっても担保権の行使が制限される場合もあり、会社更生もDIP型のケースも存在する。
当事者の工夫により実態としてチャプター11と同じように再建手法を取ることはできる。
しかし、法の建付けとして、チャプター11と民事再生・会社更生は重大な構成要素において異なるのであり、「チャプター11」=「民事再生法」「会社更生法」は「誤訳」といえる。
単に「連邦倒産法に基づく再建手続」と訳した方が正確だし、誠実だと思われる。無理に日本の制度に当てはめる必要はない。
H.Izumi
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