中小企業の与信管理にAI(人工知能)は時期尚早




AI(人工知能)ブームの再来。

 

与信管理にもAI(人工知能)を活用する動きが活発化している。

 

しかし、中小企業が行う与信管理をAI(人工知能)で代替するには

 

時期尚早ではないかと思う。

 

 

今のAI与信は、「相手の事情」(与信先の決算や経営状況・ネガティブ情報)

 

だけを勘案したモデルだと思われる。

 

しかし、本来、個々の取引の可否判断や与信限度額(与信枠)を決定するためには、

 

相手の事情(相手の財務や経営状況)だけでなく、

 

自社の事情(財務体力や資金繰り)も加味しなければならない。

 

これは、特に財務体力や資金制約のある中小企業にあてはまる。

 

 

 

与信管理の入口は、取引相手と「どのように付き合うか」、すなわち取引条件を決めることにある。

 

その中でも、特に代金回収を何カ月後とするか、現金なのか手形なのか等が「核」となる。

 

 

当然、この「取引条件の核」は、「自社」の資金繰りに直結する問題となる。

 

例えば、新規与信先に長めの代金回収期間を容認する場合、自社の運転資金負担が増す。

 

自社として、追加であとどれぐらいの運転資金を負担できるのか? 

 

手元の現金は十分か? 不足する場合は、銀行から追加でお金を借りれるのか?

 

 

これらを把握していないと、与信判断の目的である、「回収条件」や「取引額」、

 

その結果として決まる「与信限度額(信枠)」を決定することができな

 

AIでこのあたりの業務を代替するためには、

 

AIが自社の資金繰りや借入余力を認識できることが大前提となる。

 

 

AI(人工知能)が自社の懐事情を無視して与信判断した場合、

 

一気に資金繰りが多忙となり、取引相手が倒産するのではなく、

 

「自社」が倒産する事態もおこりえる。

 

AIの暴走というか、与信管理の原理原則を理解しないまま、

 

AIを使った経営陣が悪いということになろう。 

 

 

ちなみに、与信管理において「自社の事情を知る」ことが

 

重要であるという点は、組織設計上も重要となってくる。 

 

例えば、資金不安が皆無である財閥系の企業では、

 

与信審査部門が完全に経理・財務部門と分化しているケースもある(担当役員が異なる等)。

 

与信申請書(稟議書)が、経理・財務部門に回付されない場合さえあるようだ。

 

これは、与信枠をいくら多額に設定しても、必要な運転資金を無尽蔵に低利で調達できるからだ。

 

個々の与信審査を自社のファイナンス上の問題から切り離すことができるのだ。

 

財閥優良企業や大企業だからこそである。

 

 

中小企業はそうはいかない。

 

個々の与信判断は、すなわち自社の資金繰りの問題であり、経理・財務と切り離せない。

 

中小では、マンパワーの問題から、経理・財務部門が与信管理を行っているケースが多いが、

 

それは理にかなっている。

 

実際、資金繰りを睨みながら与信案件を精査しているご担当者もいらっしゃる。

 

資金力や財務体力に乏しい中小企業ほど、本来的には、資金計画と連動した緻密な与信管理が必要なのだ。

 

従って、中小企業が行う与信管理業務をAI(人工知能)で簡単にしようという試みは、

 

十分な注意が必要なのである。

 

単に業務を楽にしようという発想では、経営上の致命傷になりかねない。

 

自社の与信管理業務をAI化しようとしている方はくれぐれもご注意願いたい。

 

(記事:アクティブ株式会社 泉博伸)